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■第12回大会報告

日本家族社会学会第12回大会を終えて


大会実行委員長 直井道子


  第12回学会大会は、9月21日(土)、22日(日)に東京学芸大学において開催されました。9つの自由報告部会と2つのテーマセッション、1つのシンポジウムが設けられ、中には盛況で立ち見が出た部会もあったようです。テーマセッションの一つ「日本、韓国における家族政策と親子関係」のために韓国から4名の研究者が来日され、昨年に引き続き国際交流の火を灯し続けることができました。当日は二日間とも好天に恵まれ、参加者は250名ほどに上りました。いくつか行き届かない点もあったかとは思いますが、まずは大過なく有意義な大会を催すことができ,関係の皆様、とくに研究活動委員会の先生方、学会事務局,そして内輪誉めになりますが、本校の院生,学生には厚く感謝しております。

 大会運営の方法として、今回は参加費の前納を行わないで葉書による申し込みのみとしたため、当日朝の混乱を心配しておりましたが、まずは順調な登録風景であったかと思います。また、懇親会をごく簡素にし、参加費を1000円としました。たちまちにしてお皿が空になって口さびしい思いをするのではとも思いましたが杞憂に終わったようです。当日の申し込みも多く大変な盛況で、この方式もよかったのではないか、と思っております。いささか自画自讃となりましたが、昨年の大会会長である飯田先生に苦言をいただいていた事務局、研究活動委員会、大会実行委員会の三極構造の問題点は今年も若干残ったかと思っております。今後の大会運営をよりよいものにしていくために、反省点を引き継ぎして参ります。

 

自由報告部会の概要

A.子育て

  1. 家族関係が子どものウェルビーイングに及ぼす影響−母親の就労の有無から捉える− (木村直子・畠中宗一)
  2. 子どもの家族環境の変化(坂井博通)
  3. 父親の育児参加−日米の量的及び質的データの比較(石井クンツ昌子)
 木村・畠中報告では、母親の就労状況が子どものウェルビーイングにどのような影響を与えるかがテーマであった。結論として、母親の就労・非就労が直接子どものウェルビーイングに影響を与えるのではなく、就労状況が家族の情緒関係に対する認識に影響を与え、さらにはそれが子どものウェルビーイングに影響を与えるというものであった。使用したスケールの妥当性、家族構成および就労形態や母親自身の就労への態度など、考慮すべき変数などをめぐって質疑が交わされた。

 次の坂井報告では、国勢調査データを加工し、子どもの立場からの家族(世帯)構成が示され、年齢別にみた子どもの核家族世帯所属率の上昇が指摘された。フロアからは、データの読み方等、国調データに関する質問があった。

 3番目の石井クンツ報告では、主として父親研究に使用されたこれまでの調査法に関する整理と検討がなされた。まず、量的データと質的データの長所と短所が指摘されたのち、マルチプル調査法の提案がなされた。マルチプル調査法とは、質的調査と量的調査の組み合わせであり、相互にフィードバックすることによって、特定のテーマに関してより理論的な展開を目指すとともに、研究成果を積極的に活用する(実践する)方向性にも道を開くものとして紹介された。

 フロアからは、マルチプル調査法をめぐる質疑とともに、報告者が長年携わってきた父親の育児参加の日米比較についても活発な質疑が交わされた。3本の報告を通して、知見と調査法は車の両輪であること、また、より周到に構築された理論は実践や政策とも結びつきうることを再確認した次第である。
(岩上真珠・聖心女子大学)

B.家族意識

  1. .親の「自己犠牲」規範意識のコーホート効果と規定要因−母子関係における個人化の考察− (井上清美)
  2. 夫婦のきずなは何によって強化されるか(施 利平)
  3. 夫婦の会話にもる結婚の動機について−妊娠先行型結婚の夫婦を対象に−(永田夏来)
  4. インフォームド・コンセントに家族はどのように関わっているか−エスノメソドロジー的検討−(樫田美雄)
 井上氏は「家族についての全国調査(NFR98)」のデータを用いて、親の「自己犠牲」規範意識の全体像とコーホート間比較、「自己犠牲」規範意識の規定要因を分析した結果を報告した。施氏は、兵庫県在住の30歳以上70歳未満の有配偶男女を調査し、「夫婦のきずな」を強める規定要因を男女別に明らかにした。永田氏は、妊娠先行型結婚の夫婦に注目し、夫婦間の会話の意味内容を分析することによって、妊娠先行型結婚の夫婦は妊娠と結婚をどのように結びつけ、夫婦の間で位置づけているのかを明らかにした。樫田氏は外科病棟における医師の患者家族に対する術前説明場面のビデオ映像を分析し、インフォームド・コンセント場面に家族はどのように関わっているかを報告した。

 井上氏と施氏は統計的分析、永田氏は会話分析、樫田氏はエスノメソドロジー分析と、異なる研究手法による研究結果が報告された。フロアからは報告者がそれぞれの研究手法をとった根拠や研究手法についての質問、統計的分析の精緻化と言説的分析のレベルアップ、統計的分析と言説的分析を結んでいく可能性などについてのご意見、調査対象者が自明なこととして内面化している規範を探求し、分析する際の研究者としての姿勢などについて、たいへん興味深い議論が活発に展開された。
(佐藤宏子・田園調布学園大学)

C.仕事と家庭1

  1. 女性の就業と出生関連意識(小島宏)
  2. 育児期後の女性の就業と家族生活(西村純子)
  3. 高学歴専業主婦の再就職:初職離職時から就職までの過程−初職キャリアと再就職時の退職行動を中心として−(中内幸子)
  4. シンガポールにおける女性労働についての一考察−母親の就業の観点から−(園井ゆり)
 第1報告(小島宏・国立社会保障・人口問題研究所)では、「人口問題に関する意識調査」(1990年、1995年)のデータを用いた、出生関連の価値観に対する女性の就業の影響についての分析結果が報告された。参加者からは分析結果の考察についての意見がよせられた。

 第2報告(西村純子・明星大学)では、育児期後の女性の就業状態とディストレスとの関係について、NFR98データを用いたサポート動員仮説、個人的対処仮説の2つの仮説の緻密な検証と結果の考察がなされた。性別分業を正当化させるしくみが見られるなど興味深い知見が得られた。

 第3報告(中内幸子・お茶の水大学大学院)は、半構造的インタビュー調査から再就職における選職過程について分析を行ったものである。家族歴、夫や本人の職業歴におけるイベント間の関連付けは興味深く、参加者からは育児休業制度の利用状況などの質問がよせられた。

 第4報告(園井ゆり・九州大学大学院)では、先行研究のまとめと官庁統計を用いた研究成果が報告された。日本とは異なるシンガポールの社会・経済的背景、制度などについて参加者から質問がよせられた。

 性別分業が前提となった社会における出生に関する意識、女性のディストレス、女性の就業行動についていずれも興味深い報告であった。
(永井暁子・家計経済研究所)

D.制度・政策

  1. 民間企業の雇用管理と女性活用における課題−A自治体女性労働実態調査から−(森田美佐)
  2. 公的年金制度の変遷−ジェンダー視点からの再考−(田宮遊子)
  3. 高齢者の自己決定権と成年後見制度−扶養・相続・介護をめぐる老親子契約−(嶋守さやか)
  4. 中国農村地域における子どもの性別選好意識(李東輝)
  第1報告(森田美佐)では、民間企業における女性活用の実態と女性の雇用環境改善のための課題を探ることを目的とし、ある地方自治体の女性活用実態調査をもとにして、雇用管理における男女対等の実態、女性活用に関する意識と雇用管理の関係、育児休業制度における課題などについて考察された。

 第2報告(田宮遊子)では、年金制度の変遷の歴史が、男性労働者を「標準」とみなしていることに着目し、その制度変遷をジェンダー視点から見直すことで、年金制度の「拡充」が「男性稼ぎ主(male breadwinner)」世帯への給付の拡充によってもたらされたものであったことが考察された。

 第3報告(嶋森さやか)では、家族を高齢者がライフプランニングを行う場合の自己決定権が実現される場としてとらえ、扶養・相続・介護問題を老親子関係における契約問題として位置づけ、高齢者の自己決定権が介護、扶養および相続問題においては、どのように問題とされるものなのかについて、判例とその解釈論を利用しながら、「介護‐契約」を考察された。

 第4報告(李東輝)では、中国の農村地域に根強く存在している「男児選好」によって、出生の性比率が女児より男児に多いという出生性比アンバランス傾向が現れていることに着目し、農村地域を調査対象として、親の子どもの性別選好意識の実態について、子どもの性別選好意識とその変化、子どもの性別選好意識に影響を与える要因などについて考察された。

 フロアーから活発な意見やサジェストがなされ、あっという間に限られた時間が経過した。当初、4つの報告テーマは、一見、それぞれ違うジャンルであるような感があったが、女性労働、公的年金とジェンダー、高齢者の自己決定権と成年後見、子供の性別選好意識と、そこには、男性と女性という属性的な問題ではなく、社会的・文化的な性差を問題としていることが共通点として明らかになった。
(奥山正司・東京経済大学)

E.ジェンダー

  1. 家族、男女の役割分担に関する調査報告(安藤喜代美)
  2. 男性の育児休業取得を規定する要因(坂本有芳)
  3. 少子化対策としての「夫の子育て参加」の意味(土場学・二口貴子)
 第1報告(安藤)は、女子大学生に対するアンケート調査より、学生は家族の重要性は感じながら実際には個人を重視していること、男女の役割分担について学生の意識は平等型傾向が見受けられるが親の現実は伝統型が多く見られたことが報告された。

 第2報告(坂本)は、男性の育児休業取得を規定するのは、育児休業の必要性、性別役割分業意識、職場・仕事に関する要因であるという仮説のもと、インターネットを利用して得られた調査データの分析結果が報告されたが、仮説を支持するような結果は得られなかった。男性の育休取得規定要因を量的調査によって探るにはまだ時期的に熟していないとの意見がフロアから出され、当面は質的調査が展開されることに期待が寄せられた。

 第3報告(土場)は、少子化対策としての夫の子育て参加の意味を明らかにするために東京都下で実施された調査データ分析結果が報告された。育児負担感の高い妻は出生抑制志向が高く、夫の育児参加度の高い妻は育児負担感が低いことが確認されたが、夫の育児参加度と妻の出生抑制志向との有意な関連は認められなかった。つまり夫の子育て参加の意味は、妻の子育て負担の軽減という直接的・手段的意味ではなくマイナスイメージを弱めることで出生力に対する抑制的志向を弱めるとの考察がなされた。
  フロアからは方法論についての意見・指摘が多かったが、政策面からのアプローチの必要性も指摘され、調査研究でそれをどのように組み込んでいくかについて検討していくことが今後の課題であると感じた。
(斧出節子・華頂短期大学)

F.介護

  1. 介護意識に影響する要因分析(太田美緒)
  2. 家族介護における<無境界性>と介護責任(井口高志)
  3. 家族ケアリングの構造変動(笹谷春美)
  4. 在宅要介護高齢者のサービス利用と家族の介護サービスの評価−在日韓国・朝鮮人と日本人との比較研究−(金貞任)
  第一報告では、住宅地区と農村地区の30歳代女性を対象にした調査をもとに、介護意識の関連要因をロジステック回帰分析により明らかにした。第二報告では、報告者が介護者家族の会に参加しつつかつ2事例への長時間にわたるインタビューを行い、家族による介護について、介護以外の生活と介護が一体となっている無境界性という概念で説明した。第三報告では、イギリスのフェミニストのケアリングという概念、すなわち、愛の労働と実際の介護労働によるコミュニケ−ション労働であることと介護者と被介護者の双方の立場に立つという概念を踏まえ、112 ケースを世代、続柄、ジェンダーで12に類型化し、4類型についてケアリングの構造を比較検討した。第四報告では、K市の介護サービスの利用者について、介護保険制度下の介護サービスの評価に影響を与える要因を比較するために重回帰分析を行った。

 何れの報告も先行研究のレビューと当日の配付資料等が完璧に用意されており、フロアーからの質疑応答も活発に行われた。70年代の介護負担感の問題論的アプローチ、80年代の介護ストレスの要因分析、90年代のジェンダー論の研究等を踏まえた充実した研究発表であった。しかし、これまでの研究と同様に、要介護高齢者からの聞き取りはなく、ねたきり状態の重度化や痴呆高齢者の増大で調査がますます困難になっている。会話が成立する者同士のデ−タであるという限界をどのようにして打ち破り、介護者と被介護者の双方の立場にたつケアリング研究にするのか、自己決定権を保障するのか新たな課題である。
(岡村清子・東京女子大学)

G.家族と地域

  1. 世帯構造と直系家族規範−近世東北農村の歴史人口学的分析−(平井晶子)
  2. 離家経験のタイプとそのタイミングの変動要因(澤口恵一)
  3. 郊外化地域の家族生活における扶助関係−兵庫県K市の家族生活調査をもとに− (鈴木未来)
  4. コミュニティ・レベル分析における家族の考察−少子化への一対策−(熊谷文枝)
  「家族と地域」の自由報告部会では、テーマに合致した4本の報告がなされた。最初の平井晶子報は、近世東北農村(陸奥国安達郡仁井田村)の人別改帳の分析から、伝統的家族規範(直系家族規範)は18世紀の後半、19世紀初頭、同世紀の半ば以降によって変化していること、社会学的研究の多くがこの最後の時期以降から出発していること、を明らかにする。

 第二の澤口恵一報告は、全国家族調査データを用いて結婚・就職・就学・これらの時期と同期しない離家のそれぞれの理由別に、時代・地域、世帯、本人、コンテクストといった変数との相関を測定し、離家のタイミングを規定する要因を探る。

 鈴木未来による第三報告は、郊外化地域(兵庫県K市)での家族生活調査から、来住者だけの地域と混住化地域のそれぞれの家族生活の扶助関係に注目する。そして、生活遂行上の困りごとに遭遇した時の資源活用に触れつつ、個人化のもとにある現代家族論と地域社会論との接合の可能性を問う。

 最後の熊谷文枝報告は、日本の家族と地域性に関わるテーマを基底において、具体的には全国平均値や都道府県別データで示されるマクロな分析とは別に、地域の特殊性とも関係する家族文化や地域文化のミクロな分析の重要性を指摘する。理論的枠組みとして提案されたCOTFシステムについては、時間の制約上議論を深めるには至らなかった。

 報告の内容は、発表者の真摯な調査研究の成果に基づく実証的なものから、貴重な史料の解読や、家族を含むコミュニティの考えうるモデルを提示するスケールの大きなものまであり、研究者の知的広がり(多様性?)を感じることができた。ただ、若干の感想を許して頂けば、第1報告では「家」の系譜関係や身分制から小農体制への移動についても触れれば、村の構造とも関わってお一層面白かったと思われる。また、第4報告は、universalism or particularismという今日の関心事と関連する報告だったが、時間の制約で会場との交流ができなかったのが残念であった。
(橋本和幸・金沢大学)

H.高齢者

  1. プロダクディブ・エイジングと創発性−D.J.レビンソン理論の再検討−(片桐資津子)
  2. 高齢期における社会化エージェントについての考察(田中優子)
  3. 高齢期の社会関係と主観的QOL−関係統制感の媒介効果−(西村昌記)
  4. 高齢者の接触頻度と情緒的なつきあいに関する縦断研究−社会的ネットワーク構成にみられる性差−(平賀明子)
 第1の片桐報告は、プロダクティブ・エイジングの観点から要介護高齢者の発達に着目したものである。特別養護老人ホームの高齢者間の相互作用における「創発性」を考察するための理論的な基礎部分として、ゴッフマンのアサイラムやレビンソンの生活構造の概念が検討された。「創発性」のとらえ方をめぐって、議論が交わされた。

 第2の田中報告は、高齢期社会化エージェントの再検討である。既存の研究を検討して、社会化の過程を「行動・活動の変容」と「価値の変容」の2側面から定義し、後期高齢者への面接調査データの分析から、老いの自覚による「生物的老化」という内在的エージェントを明らかにした。社会化エージェントとしての「生物的老化」に対して、質疑応答があった。

 第3の西村報告では、質問紙調査データの分析から、高齢者にとってサポート・ネットワークは、「他人とうまくいっている」や「他者の理解されている」という関係統制感を通じて、主観的QOLの向上に寄与するという媒介メカニズムが提示された。関係統制感の媒介効果のとらえ方、サポート・ネットワークの質問項目の選定について、質疑応答がみられた。

 第4の平賀報告は、高齢者にとっての重要な他者、その存在がサポートの入手に与える影響について、社会的ネットワークの接触頻度と情緒的つきあいに関する縦断的研究から、性差を検討したものである。6年間(1994年→2000年)に、世帯別と性別に、家族や友人などとの情緒的つきあい、および主観的幸福感の変化が示された。ネットワークの構造的変化を考察する必要性について、質疑応答があった。

 全体的には、質的データの第1と第2の報告では、概念規定とその妥当性の問題が、いっぽう量的データの第3と第4の報告では、データの分析方法と解釈の問題が、各々のこれからの研究課題として浮かびあがったと考える。このことは、今後の家族社会学会全体で共有すべき重要な課題でもあるという印象を受けた。
(安達正嗣・名古屋市立大学)

I.仕事と家庭2

  1. 母親の就業継続と子育て支援(白波瀬佐和子)
  2. 女性の仕事と家庭生活に関する研究(1)−子どもを持つ女性の働き方−(竹田久美子・袖井孝子・岡村清子・岩科志津子・平野順子)
  3. 女性の仕事と家庭生活に関する研究(2)−母親の就業形態と育児不安感−(平野順子・袖井孝子・岡村清子・竹田久美子・岩科志津子)
  4. 女性の仕事と家庭生活に関する研究(3)−育児休業制度等両立支援策の利用とその効果−(岩科志津子・袖井孝子・岡村清子・竹田久美子・平野順子)
 本セッションでは4件の報告が行われた。「第二回全国家庭動向調査」を分析した白波瀬報告では、大多数の女性が第一子出産を契機に仕事を辞める傾向を確認し、しかも、福利厚生制度が整っているはずの大企業での就業継続率が低いこと、また、育児支援については、官公庁勤めの者でも就業継続には親族支援が必要とされており、専門職やホワイトカラーの者には親族以外の制度の重要性が指摘された。

 続く3報告は、育児休業制度施行以降に第一子を出産した女性を対象とした共同研究「女性の仕事と家庭生活に関する研究」に基づくものである。竹田他は、女性の就業パターンに地域差が大きく影響を与えている点を指摘し、平野他は、育児不安尺度の因子分析およびクラスター分析を行い、岩科他は、育児休業制度等両立支援策の利用と効果について検証し、制度の有無以上に利用しやすい職場の雰囲気やまた復帰後の支援策の必要性を指摘した。

  フロアからは、いくつかの方法論上のコメントがなされた後、仕事と家庭の両立戦略として、また少子化対策としても求められている「柔軟で多様な就業形態」と女性労働の周辺化の問題、さらには、男性が育児のプライマリケアの担い手となる可能性など、仕事と家庭の調和における経済効率と男女間の公正な資源配分の問題などについて討議された。
(平尾桂子・上智大学)

テーマセッション部会の概要

A.NFR98からの提言

    コメンテーター:石井クンツ昌子

  1. NFR98における夫婦関係の測定−方法、妥当性、成果、課題−(松田茂樹)
  2. NFR98の測定ロジックとその問題性(保田時男)
  3. 無効回答傾向の地域差(田中重人)
  本セッションは(1)NFR98調査票の再検討を行う「NFR98検討研究会」の成果を学会に還元し、(2)計量的研究のためのツールを共有する、という2つの目的のもとで企画された。

 松田報告は、家事・育児参加、同伴行動、情緒的サポートの夫婦関係項目項目をとりあげ、NFR98データを用いて信頼性と妥当性について報告した。項目の複数化、回答選択肢の部分的修正が提言されるとともに、かなりの項目に信頼性と妥当性が認められることも示された。保田報告は回答者と他者との関係性を問う項目が、他者が誰であるかを一義的に確定できない「set(集合)」を対象にした測定項目である場合の問題点を指摘した。子ども、きょうだいなどとの関係性がsetレベルで測定されている場合、出生順位などの差異を考慮した分析ができない。結論的にはsetではなくindividualレベルで項目を統一せよ、というものであった。田中報告はNFR98データの欠損傾向について分析し、回収率と無回答傾向のパターンの地域差を報告した。回収率は高くても無回答傾向が高い山形、回収率は低いが無回答傾向も低い東京、大阪などの地域差が生じており、この原因の解明の必要、欠損傾向の分析を調査報告書に示すことの必要性が論じられた。3報告に対し石井クンツ氏よりアメリカの方法論の紹介などを含んだ情報量の多いコメントがなされた。

 どの報告も高水準の内容であったが、とくに保田報告のプレゼンテーションはアニメーション機能などを用いたマニアックなもので、会場から驚嘆の声(!)があがった。それぞれの報告が私たちが共有すべき情報を的確に示してくれたために、参加者にとっては確実に何かが得られたセッションであったと思う。
(稲葉昭英・東京都立大学)

B.日本・韓国における家族政策と老親子関係

    討論者:杉井潤子・藤崎宏子

  1. 社会変動と日本の家族−老親扶養の社会化と親子関係−(染谷俶子)
  2. 韓国の100歳老人と家族(韓慶恵・李貞和・金柱賢)
  3. 金大中政府の家族政策の可能性と限界(金美淑)(翻訳・通訳:金貞任・金香男)
 今回の日韓交流企画としてのテーマセッションは,「日本・韓国における家族政策と老親子関係」という関心のもとに,日本側からは家族変動の規定要因ともいうべき「社会変動と日本の家族―老親扶養の社会化と親子関係」(染谷俶子会員報告)が家族変動をマクロ的におさえた報告をおこない、比較のパースペクティブを示した。

 韓国からは,急速な高齢化のなかで象徴的に現れている超高齢化の最先端をいく「100歳老人と家族」(韓慶恵教授らの共同研究)をグランディドセオリーを適用した研究成果から家族扶養の課題に対応する社会政策の必要性を指摘した報告と、自立生活主義を象徴する生産的福祉の理念にもとづく「金大中政府の家族政策の可能性と限界」(金美淑教授)が報告された。討論者にはテーマに造詣の深い杉井潤子会員と藤崎宏子会員をお願いした。セッション終了後も会員と報告者が20名以上集まって1時間ほどの質疑と意見交換の継続をおこなうことができた。森岡元会長、袖井前会長、石原会長の参加を受けて熱気のあるテーマセッションを展開できたことは、企画者として幸いであった。

 また昨年同様に韓国からの留学生(金香男:同志社大学大学院、金貞任:東京都老人総合研究所・長寿科学)に貴重な役割を引き受けていただき、原稿の日韓=韓日の翻訳と会場での通訳をお願いすることができた。このテーマセッションの詳細は来春発行の機関誌『家族社会学研究』に報告論文が掲載される予定であり、次年度以降の交流の契機になればと祈念している。会員で韓国からの報告者に連絡希望される場合はメール(sugioka@hokusei.ac.jp)で問い合わせをお願いします。
(杉岡直人・北星学園大学)

C.「家族愛」の名のもとに−生体肝移植をめぐって−

  1. わが国の生体肝移植の現状(武藤香織)
  2. 生体肝移植を経験した家族の立場から(鈴木清子)
  3. 医療と家族への社会学的視座(細田満和子)
 本セッションでは、あらゆる問題を内包しながらも家族と医療者という二者間のみで行われている、生体肝移植医療を取り上げ、特に提供者(ドナー)の立場や提供の意思決定をめぐる問題に焦点をあてた。ドナーの立場に立った議論の機会は、医療社会学や医療倫理学などでもほとんど取り上げられた例がなかったため、参加者がおられるかどうか不安であったが、早朝のセッションにもかかわらず、約30名が熱心に参加して下さった。この場を借りて改めて御礼申し上げたい。

 まずセッションの目的と基本的な背景を共有すべく、司会の武藤が2002年6月末で2,000件を超えている日本の生体肝移植の現状を述べた。法的規制のなさ、ドナーの合併症、適応範囲の拡大の問題などを挙げた。次に、鈴木清子氏(生体肝移植ドナー)が、臓器移植が限定された最終手段だった時代からより拡大される時代にかけて、肝臓の一部を娘に提供した経験を述べた。移植医療の「幻想性」や医療者とのコミュニケーションなどを指摘した。三番目に、細田満和子氏(日本学術振興会・東京大学)は、生体からの臓器移植が医療社会学と家族社会学の死角に陥っていることを指摘し、家族の内部から問題提起がなかった背景として、「命の贈り物」の重さや家族愛の問題を提起した。最後に、指定発言として、清水準一氏(東京大学医学系大学院)が、看護師としての経験をもとに生体肝移植ドナー約100名に対して行った調査の概要を報告し、「医学的適応」のほかに「社会的適応」にも注視すべきであると述べた。

 司会の反省は、質疑応答を鈴木氏の報告の後に集中させてしまい、十分な総合討論の時間を確保できなかった点である。質問は主に鈴木氏に対して、次子への思い、移植コーディネーターの存在などが寄せられた。また、「家族へ介入する国家(J.ドンズロ)」の解釈をめぐる意見交換があり、今後、医療社会学・家族社会学間の対話を進める意義を再認識して終わった。
(武藤香織・信州大学)

シンポジウム

「現代社会における家族ならびに結婚の意味を問う」
パートT 現代社会における結婚の意味とは何か

  1. シングル単位視点から見える「結婚」と「恋愛」(伊田広行)
  2. 結婚をどうとらえるか(望月嵩)
  3. 結婚制度の揺らぎ−スウェーデン社会からみた結婚・家族の意義−(善積京子)
  4. 同性間のパートナーシップ試論(風間孝)
 今年のシンポジウムは、研究活動委員会により設定された三年間統一テーマ「現代社会における家族ならびに結婚の意味を問う」の、第一回目企画であった。学会員であるパネリストとして望月嵩氏と善積京子氏、ゲストパネリストとして伊田広行氏と風間孝氏をお招きした。研活委員会からの事前の要請は「現代における制度としての結婚の意味を社会学的に問う」ことであった。各パネリストがその制約のなかで非常に密度の高い議論を展開し、フロアからの質疑も活発になされ、実りあるシンポジウムとなった。

 今年のシンポジウムの意義としては、まず、家族社会学が構築してきた近代的結婚理論と非法律婚や同性間パートナーシップなどの脱近代的社会現象、さらにはシングル単位論との対峙が本格的に行われたことがある。望月氏の近代的結婚理論VS伊田氏、風間氏、善積氏という構図となったが、スウェーデンのサンボや同性間パートナー登録においても親密な二者の権利・義務関係の再定義が試みられているなど、「脱近代的結婚」と位置づけられる現代的現象にも「近代的結婚」の延長上にある要素がみられる点も鮮明になった。

 当日のディスカッションのなかで、企画側の意図を超えた成果もみられた。ひとつは同性間パートナーシップに関する議論が家族社会学会において初めて正面からなされ、このテーマが「周縁」の問題では決してなく、近代社会のジェンダー秩序のみならず公/私の領域分離をゆるがすインパクトをもつという論点が確認されたことである。いま一つは、「結婚」あるいは親密な二者パートナー関係の権利・義務に対して特権的な位置が与えられない未来社会の可能性が示されたことである。

 次年度以降、子どもも含めた「脱近代的関係性」について、いかなる理論的、実践的論議が展開されるのか、楽しみである。
(山根真理・愛知教育大学)