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■第13回大会報告

日本家族社会学会第13回大会を終えて


大会実行委員長 畠中宗一


 第13回大会は、9月6日(土)、7日(日)に大阪市立大学において開催されました。8つの自由報告部会と4つのテーマセッション、1つのシンポジウムが設けられました。大阪市立大学は、新幹線や空港から交通の便のあまりよくない場所に立地し、参加者数が危惧されましたが、当日は、二日間とも好天に恵まれ、参加者は220名ほどに上りました。会場等でいくつか行き届かない点もあったとは思いますが、まずは大過なく有意義な大会を催すことができたと思っています。大会に参加してくださった皆様、関係の皆様、研究活動委員会の先生方、学会事務局、そして内輪誉めになりますが、大会実行委員会の先生方、本校の院生、学生、卒業生、そして学会運営のために力を貸して下さった皆様に心より厚く御礼申し上げます。

 大会運営の方法として、本大会も前年の大会にならい、参加費の前納を行なわないで葉書きによる申込みのみとしました。当日の朝等の受付での混乱もなく、順調に行なうことができたかと思います。また、懇親会については、コミュニケーションの場としての要素を重要視し、参加費を2000円として、一人でも多くの参加を望みましたところ、120名分用意した料理やビールがなくなるほど、大変な盛況をみることができました。

 今後の大会運営をよりよいものとしていくために、本年は次年度の大会校へ反省点等を引き継いでいただきたいと思います。

 

自由報告部会の概要

A.親子関係

  1. 日本における「やさしい父親」の意味(李 基平)
  2. 父親の育児参加が家族関係に与える影響およびその条件(平川眞代)
  3. 記憶からみる子供の家族(木下裕美子)
 第1報告(李基平)は、日本の父親像が「やさしい父親」へと変化していることに注目し、この変化が父親の「表出的役割」への変化を意味しているのかについて、子どもの側からみた父親のイメージや役割について、既存の調査データを基に考察を行ったものである。結論として、日本の父親は表出的役割の量・質的すべての側面で低い水準にあり、日本の父親の「やさしさ」とは子どもとのかかわり不足から起因するものであり、「厳しく」なりようのない「やさしさ」であるということであった。フロアからは、データの分析方法についての質問や過去と現在を比較するデータの必要性について議論がなされた。

 第2報告(平川眞代)は、未就学児をもつ父親にインタビュー調査を行い、父親の職業や労働環境が父親の育児参加に与える影響について考察したものである。結論として、父親の職業により子どもとのかかわる時間だけでなく質に影響を与えていることが報告された。フロアからは、類型化の方法などをめぐって質問がなされた。

 第3報告(木下裕美子)は、フランスにおいて「親が離婚した」という出来事をもつ子どもの記憶に焦点を当てたインタビュー調査を行い、個人の主観的状況と客観的状況の相違や共通点を考察したものである。結論として、客観的状況にかかわらず家族規範の一つの軸である「親子の愛情」という軸を個人が保持し続けるように行為と記憶を選択していくことが報告された。フロアからは、調査方法や翻訳の方法、「多様化」の意味などの質問がなされた。3本の報告では、父親へのインタビューや子どもの視点など親子関係研究における新しい視点が導入されており、今後、発展が期待される興味深い報告であった。
(冬木春子・三重短期大学)

B.家族観

  1. ハンガリー家族研究のパラダイムにみられる歴史のコンテクスト:放射する過去 (ライカイ・ジョンボル)
  2. 家族機能の衰退と外部化−死者祭祀の外部化について−(井上治代)
  3. 「精神障害者」の親たちのライフヒストリー −その語りが照射する「家族」観に焦点をあてて−(南山浩二)
 ライカイ報告は、日本の状況と比較しつつ、20世紀におけるハンガリーの家族社会学の歴史を辿り、その中にハンガリー家族の歴史的変容の影響を見いだす。とりわけ、80年代以降の家族の多様化に対する家族社会学の取り組みに関して、日本と異なりハンガリーでは「集団的アプローチ」に対抗する「個人的アプローチ」の登場が見られないという、興味深い相違が示された。フロアからは、報告内で用いられた「親子制家族」という概念や、家族のとらえ方の諸次元について質問が出された。

 井上報告は、死者祭祀の外部化の実態を通じて家族の変動を捉えようとする試みである。墓祭祀から、遺骨の移送・納骨、葬儀式と死後事務処理に至る、死者祭祀のさまざまな段階を担う企業やNPOの実例が紹介された。それらの利用者に親族の全くいない人がごく少ないという知見も重要である。このような報告に対し、個人化論で捉えることの限界や、死者祭祀が求められることの意味などについて質問が寄せられた。

 南山報告は精神障害者の親たちの語りの分析を通じて、個々の事例における、わが子の「病気」「障害」の意味づけの揺らぎや変容、家族のあり方の捉え返しの様相を描いていく。とりわけ、親たちがドミナントストーリーやモデルストーリーをどのように受容し、あるいはそこから解放されていったかに注目した分析がなされた。質疑応答では、ライフ・ヒストリーとライフ・ストーリーの相違、モデルストーリーの浸透の度合い、「曖昧な喪失」概念の適用の妥当性が焦点となった。

 第1報告において家族に対する「個人的アプローチ」の有無という問題が提起されたが、続く2つの報告のいずれにおいても、調査対象となった当事者の中に家族・親族の重い意味と個の自立の間のせめぎ合いを見ることができたように思われる。個々の報告に対して活発な議論が交わされ活気のある部会であったが、司会者の力不足のため、このような共通論点に関する議論に発展させられなかったことが残念である。
(中里英樹・甲南大学)

C.高齢期

  1. 契約的親子関係の誕生−相続規範にみる後期親子関係の変容−(阿部真大)
  2. 介護ライフスタイルと親族ネットワーク −家族ライフスタイル論的アプローチによる高齢者介護研究−(春日井典子)
  3. 日本と韓国のシルバー人材活用−派遣事業から創業支援まで−(山地久美子)
  4. 「共」的セクターに参画する高齢者のライフスタイルと社会的ネットワーク(宍戸邦章)
 いずれの報告も、従来の高齢者研究では明らかにされてこなかった今日の高齢者の扶養、介護、労働、意識の種々の新しい現象を切り取った意欲溢れる報告であった。例えば阿部は、最近増加している「遺言信託」を取り上げ、それは従来の清算的相続規範から契約的相続規範への移行であり、自らが保有する資産を積極的に運用し、その一貫として子どもに扶養・介護を委託するという「主体的高齢者像」をとらえた。宍戸も、伝統的・非選択的・インフォーマル中心の従来型高齢者ネットワークを越えた、「共」的セクター(NPOやボランティア活動など)に参画する高齢者の言説分析から、彼ら自身の「脱老人アイデンティティ」や地域社会にもたらす新しい機能を示唆した。春日井も阪神地区の23のケーススタディから、伝統的な介護規範に縛られず、被介護者本人の意思を尊重するために創られてゆく介護のための新しい「親族ネットワーク」のあり方を引き出した。山地も主体的な高齢者の生き方に深く関わる就労の問題に着目し、とくにシルバー人材センターを対象にその政策上の問題点を明らかにすることを試みた。

 このような報告に対し会場からは、本当に現実はこのように進んでいるのか、現状とはズレがあるのではないか、契約・対価を伴なわない新しい扶養・介護関係も形成されているのではないか、調査方法や対象如何等について質疑が出された。確かに、どの報告の対象者も都市に住む資産もそこそこにある階層の高齢者に傾斜していた。問題は、これらの「新しい高齢者および親族関係」が全体社会の中に占める地位をきちんと限定して論じるという問題意識が希薄なことにあるのではなかろうか。
(笹谷春美・北海道教育大学札幌校)

D.夫婦関係

  1. 現代のカップル関係におけるコンフリクトへの説明の試み −Ulrich Beck, Elisabeth Beck-Gernsheimの家族論を用いて−(脇坂真理子)
  2. 夫婦関係の質評価における夫婦間乖離とコミュニケーション(土倉玲子)
  3. 夫婦の対等感−弘前市におけるスノーボールサンプリングによる質的調査から−(羽渕一代)
  4. 高齢期の夫婦関係−結婚満足度とその関連要因− (西村昌記・水嶋陽子・矢部拓也・古谷野亘)
 第1報告(脇坂真理子・東京都立大学大学院)は、Ulrich BeckとElisabeth Beck-Gernsheimの家族論に依拠し、カップル関係におけるコンフクリクトの理論構築がテーマであった。夫妻(男女)間には家事労働や賃金労働の配分をめぐる潜在的な対立が存在するが、これらの対立が予防的、緊急的な戦略を通じてどのように処理されるのかについて詳細な検討がなされた。

 第2報告(土倉玲子・北海道文教大学)では、夫婦関係の質評価における「夫婦間乖離」について分析が行われ、夕食回数と「夫婦間乖離」との間には統計的に有意な相関がみられないのに対して、会話時間は「夫婦間乖離」に対して有意な影響をもつことが報告された。

 第3報告(羽渕一代・弘前大学)では、夫婦の「対等感」に焦点があてられ、夫婦の活動認識と「対等感」との間に有意な相関がみられることが明らかにされた。

 第4報告(西村昌記・ダイヤ高齢社会研究財団)では、高齢期夫婦における結婚満足度の要因分析が行われ、配偶者の活動能力は夫と妻の双方の結婚満足度を高めるのに対して、夫婦同伴行動は妻の結婚満足度のみに影響があることが示された。

 第2〜第4報告に共通して明らかになったことは、夫婦の質評価・「対等感」・結婚満足度のいずれにおいても妻と夫のズレが大きいこと、会話・夫婦同伴行動・夫婦の活動認識といったコミュニケーション行動が夫婦関係に有意な影響を与えている点であった。参加者からは、「夫婦間乖離」および「対等感」の指標化、分析方法、コミュニケーション行動における夫妻間の非対称性などについて質問がだされた。
(松田智子・佛教大学)

E.家と婚姻

  1. 結婚忌避・差別のメカニズム−被差別部落問題を事例として−(内田龍史)
  2. 上層資産階層における結婚 再生産および選別−戦略としての婚姻−(小山彰子)
  3. 近世における家と檀那寺−美濃国方県郡東改田村の半檀家−(森本一彦)
 内田報告では、現代社会における部落差別と配偶者選択メカニズムという二つの接合面に現れる問題が、大阪府のおこなった調査結果をもとに報告され、部落外居住者との通婚が増加している一方で、しかしなお結婚差別が根強く存在する現状をどう解釈するのかに照準して主な質疑が交わされた。

 第二報告は、「戦前支配階級」として分類された本人およびその家族へのインタビューを基に、「上流」家庭における文化再生産の実態を具体的な社交やジェンダー規範などについて明らかにしたものである。フロアからは文化資本と社会関係資本の概念的位置づけ、現代日本社会において「上流」、「上層」をどう位置づければよいのかをめぐっての質問、発言があった。

 第三報告は、近世初期から幕末までの200年間にわたる当地域の宗門改帳を史料として、夫婦や親子が檀那寺を異にする「半檀家」の変化を追ったもので、半檀家が一家一寺に統一されていく過程に一家で先祖祭祀をおこなう「家」の確立をみる。宗門改帳の史料解釈をめぐる質疑はもとより、当地の政治、経済的状況との関連、中世からの変化をどう考えるのかなど、歴史社会学的の重要なポイントにつながる議論が交わされた。

 データの種類や方法は異にするものの、それぞれデータに忠実にかつ大きな議論に連なっていくことのできる大胆さ、ユニークさを持ち合わせた個性的な発表であり、フロアからの発言もつきることのない楽しい部会であった。
(米村千代・千葉大学)

F.出産

  1. 不妊治療を受ける夫と妻の体験と認識の相違に関する研究(西村理恵)
  2. 妊娠順位別の出産意図の変化から探る出生児数規定要因について(平松紀代子)
  3. シンガポールにおける出生・家族政策と出生力の関係(小島宏)
 第一報告は不妊治療中の夫婦17組へのインタビュー調査に基づき、不妊治療の動機付けにジェンダーの影響を大きいこと、夫婦には受診の動機付けから取り組みの姿勢、情報などにおいてギャップがあり夫婦間の問題を生じさせるが、その解決に関しては特に夫のコミュニケーション能力の乏しさが重大な障害と感じられること、それも含めて夫婦それぞれに対するサポートが必要であると論じた。不妊治療に対するジェンダーの影響は、治療が妻の身体を主として展開されるというだけでなく、妻自身が母親役割実現のために主体的に取り組むこと、夫がその過程で積極的関与ができず夫婦間ギャップが生じ、しかもその克服のための能力に乏しいこと、という、非不妊夫婦におけるジェンダーギャップと同様の構図として見られる。今後は、非不妊夫婦や不妊治療を受ける男性、また不妊治療を中止した夫婦との比較を視野にいれながら問題点をさらに明確化することが望まれる。

 第二報告は、四年制女子大学を卒業した女性たちとそのパートナーに対してアンケート調査を行い、特に妊娠順位による出産意図の違いに着目して出産児数規定要因を探るものである。統計処理において既存子どもの有無によって統制せずに出生順位による出産意図を比較するなど少しく疑問の出された点もあるが、第1子(経済的要因)、第2子(きょうだい、性バランス選好)、第3子(計画性、母親の体力・年齢、育児サポート)が規定要因として明確化され、今後の出産支援への具体的展望が示唆されるとともに避妊や出産に関するパートナーとのコミュニケーション・ギャップも指摘された。

 第三報告は、アジア諸国のなかでは日本に次いで早期に出産率低下を実現し近年は促進策に転換したシンガポールについて、貴重な資料にもとづき出生・家族政策の影響を探り、日本の今後の政策へのヒントを探ろうとした。政策の効果には諸説あり一定しないようであるが、民族的に多様であることを活かして文化的価値観の相違に配慮する政策の必要性が示唆された。
(田間泰子・大阪産業大学)

G.子育て

  1. 母親のネガティブな子育て心理に影響する要因について −母親の子育て意識とコミュニティ意識に関する実証的研究−(河野由美)
  2. 社会的ネットワークの構造と力−育児におけるネットワークのサポート効果−(松田茂樹)
  3. 母親たちの家族再構築の試み−「不登校」児の親の会を手がかりにして−(松本訓枝)
  4. 里親養育にみる「家族」の意味(和泉広恵)
 第一報告は子育て不安と子育て協働意識および地域協働意識の関連を実証したもので、地域における子育て支援に関して有益な示唆を与える調査報告でした。

 第二報告では、育児ネットワークの規模と密度による効果の違いについて実証されました。その結果、規模が大きく密度は中程度のネットワークが有効であることが示唆されました。

 第三報告は、不登校児を持つ親の会に密着して参与観察およびインタビューを行なった事例研究で、子どもの不登校を母親たちが受容するプロセスや、子どもの不登校によって顕在化された親子関係・夫婦関係の問題などが明らかにされました。

 第四報告は、里親47ケースに対してインタビューを行なった事例調査で、養子縁組という枠組みから「家族」の意味を明らかにしようとしたものです。考察では、「家族(親)であること」と「家族(親)をすること」との間のズレが見出されました。

 2003年は少子社会対策基本法や次世代育成対策法が成立し、少子化に焦点が当てられた年ですが、第一・第二報告はその流れの上にある育児問題に関するものであり、第三・第四報告は多様化する子育ての問題を丁寧に拾いあげたものでした。いずれも現代の育児における諸問題を考える上で重要な研究であり、多くの示唆が得られました。
(木脇奈智子・羽衣学園短期大学)

H.女性

  1. 親同居と女性の就労に関する考察−NFRJ98データに基づいて−(熊谷文枝)
  2. 現代女性の離家規定要因−『消費生活に関するパネルデータ』を用いた分析−(福田節也)
  3. 戦後女性労働行政の原点−アメリカ占領下の労働省婦人少年局設立−(豊田真穂)
  4. コンピュータ・コーディングによる夫婦問題の分析(大瀧友織)
 第一報告の熊谷氏は、有配偶者日本人女性の就労に関する考察について報告した。NFRJ98の全国データの分析結果から、夫方親と同居の女性の就業率は有意に高まることなどを明らかにした。またコンフリクト回避仮説を用いて、親同居女性の就労についての考察を行った。

 第二報告の福田氏は、『消費生活に関するパネルデータ』を用いて、現代女性の離家規定要因の分析結果を提示し、高学歴女性は進学による離家を除くあらゆる離家を遅らせる傾向があることなどを明らかにした。近年の女子進学率の上昇は、女性の就職による離家を抑制し、晩婚化を促すことによって、今後も女性の世帯形成を遅らせる可能性があることなどを示した。

 第三報告の豊田氏は、アメリカ占領下の労働省婦人少年局の設立について、当時の個人文書や国会議事録の資料を用いながら分析した。婦人少年局の設立においては当時の女性指導者の声は必ずしも反映されていたとは言えず、むしろGHQと厚生省の考えが合致した結果であったことなどを明らかにした。

 第四報告の大瀧氏は、身の上相談についてコンピュータ・コーディングによって分析を行ない、身の上相談の各事例を解釈していては明確には分からないような差異を統計的に明らかにした。年齢が高いほど性別役割分業意識を強く内面化しているため、そうでない世代である娘や息子とコンフリクトを起こしやすいことなどを明らかにした。

 これらの4氏の報告の後、フロアーとの質疑応答があり、量的データおよび質的データの分析における方法や、結果の解釈などを巡って活発な議論があった。
(前田信彦・立命館大学)

テーマセッション部会の概要

A.戦後日本の家族変動−「戦後日本の家族の歩み」調査(NFRJ-S01)から−

    研究代表者:熊谷苑子

  1. 結婚のプロセスの変化(熊谷苑子)
  2. 「直系家族制から夫婦家族制へ」は本当か(加藤彰彦)
  3. NFR-S01の方法論的問題(大久保孝治)
 本テーマセッションの目的は、2001年1月から3月にかけて行われた「戦後日本の家族の歩み」調査(NFRJ-S01)の個票データの公開(当面は学会員のみ)にあたって、一般の学会員に向けて調査の概要とデータの特徴を紹介することにあった。

 NFRJ-S01は、全国の1920年から1969年生まれの女性5,000人(有効サンプル3,475)を対象として、(1)女性の結婚経歴、職業経歴、家族介護経歴、結婚後の親との同居経歴といった経歴データ、(2)結婚式と披露宴、出産と育児、親の介護、きょうだい関係と相続といった家族的トピックスをめぐるデータを回想法によって収集し、出生コーホートならびに結婚コーホート間比較によって戦後日本の家族変動を実証的にとらえようとするもので、調査時点における日本の家族のデータを収集することを目的とする全国家族調査(NFRJ98、NFRJ03・・・・)を補完することを企図している。

 第1報告は家族的トピックをめぐるデータの分析例で、結婚のきっかけや仲人などの変化を夫の職業別に分析して、結婚のプロセスにおける夫婦理念の優位化と、結婚を承認する社会的基盤の変化(脱埋め込み化)を明らかにした。

 第2報告は経歴データの分析例で、結婚後の親との居住関係の経歴データを分析し、戦後日本の家族変動は直系家族制から「結婚初期の核家族形成+結婚中期以降の直系家族形成」というプロセスをたどる修正拡大家族システムへの変化であることを明らかにした。

 第3報告は、対象者を女性に限定したことの妥当性、回想法によって収集されたデータの信頼性、出生コーホートから結婚コーホートを編成する際の注意点等について論じた。質疑応答はもっぱら第2報告の知見の是非をめぐって行われた。

 なお、現在、NFRJ-S01の個票データは会員に向けて公開中である。データの利用を希望する会員は、全国家族調査委員会事務局までメール(nfrj-office@list.waseda.jp)で申し込まれたい。
(大久保孝治・早稲田大学)

B.抵抗体としての家族の可能性:家族が主体的であるために

  1. 家族の「抵抗機能」水準を高めるための家族支援(畠中宗一)
  2. 食事学からみた家族:幼少期の食の意味(大谷貴美子)
  3. 子どもにとっての家族の条件:母性機能と父性機能(野澤正子)
 本テーマ部会の目的は、主体的存在としての「家族」のあり方について考えるという点であり、その際、山根家族論に述べられる「抵抗体としての家族」の可能性を一つの手がかりとして、主体的存在であるための「家族」の方向性に関する議論を進めていくことであった。

 家族社会学・臨床社会学の視点に立つ畠中宗一氏は、山根家族論の今日的可能性を探るべく、その家族論を基に家族が社会に対して適応すると同時に、抵抗する機能を重視するという視点から、家族の抵抗機能の水準を高めるための方向性について述べた。

 食事学の視点に立つ大谷貴美子氏は、認知脳科学の知見から人間らしさを形成する上で重要とされるPQフレーム(自我フレーム+社会的知性フレーム+感情的知性フレーム)に言及し、PQフレームを豊かに育てるためには、乳幼児期、豊かな環境にさらされることが必要であり、食事学の視点からの調査を基に、楽しい食事時間を介して家族が群れること団欒することの重要性を述べた。

 児童福祉学の視点に立つ野澤正子氏は、子どもの養育環境がきわめて不安定なものになり、子どもを社会から排除し、社会の隅に追いやっている今日の社会状況と子どもの発達にとっての母性機能、父性機能に関する問題について述べた。

 現代フェミニズム議論の出発点は、家族という制度に、男性優位主義を作り出す根源を見い出すものであり、社会史研究を摂取したジェンダー・アプローチは、母性愛や母性本能という観念自体が近代家族の成立・定着とともに創設されたもので、歴史の途上で「発明」されたものであると捉える。それぞれの報告者が、現代フェミニズムの議論やジェンダー・アプローチ等の視点をどの様に捉え、どの様に止揚していくかといった点を子どもという視点を含めながら議論していく予定でいたが、司会者の戦略不足により、十分な議論を引き出せないままテーマ部会を終了したことを深く反省している。
(細江容子・上越教育大学)

C.NFRJ98からの提言(2)

    コーディネーター:稲葉昭英
    コメンテーター:石原邦雄

  1. ライフイベントの測定(澤口恵一)
  2. NFRJ98と世帯表:家族調査における「世帯」について(田渕六郎)
  3. きょうだいデータを用いた家族的類似性研究の方法とその可能性(平沢和司)
 NFRJ98(第1回全国家族調査)は、誰もが活用できる家族についての大規模計量データを提供しただけでなく、研究者間で調査法や統計解析法について知識を共有することも目指していた。その趣旨に基づき、昨年度大会に引き続き今大会でも、NFRJ98を契機とした、家族に関する方法論上の課題等について検討しあうセッションが設けられた。

 澤口報告は、イベントヒストリー・データを用いた分析の可能性を報告した。出来事の配列までわかるデータは少なく、NFRJ98も十分なイベント情報を備えているわけではない。澤口報告は、配列情報があれば家族研究にとって有用な分析の可能性が開かれることを指摘し、データや方法論が研究関心を制約している現状を踏まえて、データ収集の重要性を訴えた。

 田渕報告は、親族を基本としていたNFRJに世帯表を組み込むことの意義を主張した。あわせて、世帯の不安定性をふまえて、家族調査において世帯情報を収集することの意義と、測定上の問題点を明らかにした。世帯は幅広く使われている概念でありながら、実は世帯情報を活かした分析は十分には行われていないことが指摘された。

 平沢報告では、教育達成におけるきょうだい間の類似性の分析を念頭に、家族間効果と家族内効果を検討する共分散構造分析が紹介された。最新の方法により、古くからのテーマである家族の類似性研究にあらためて脚光があてられ、その可能性が提示された。

 コメンテーターの石原氏からは、個別の報告ごとに、家族の経験的研究の歴史(調査研究史)をふまえたコメントを頂戴した。また、フロアからも、日々の経験をふまえた活発な意見が出された。家族研究者が方法論に関しても切磋琢磨しあう機会となったことと思う。
(西野理子・東洋大学)

D.構築主義的家族論をどう「使う」か

    コーディネーター:岡本朝也
    コメンテーター:山田昌弘・木戸功

  1. 社会構築主義に関する覚え書きと家族研究(苫米地伸)
  2. 構築主義的家族研究とエスノメソドロジー的関心(松木洋人)
  3. 婚外子研究における構築主義的アプローチの意義(橋本真琴)
  4. 「家族の相対化」への応用−家族概念の構築と近代家族論−(岡本朝也)
 本部会を設定したコーディネーターの目的は、家族研究における構築主義的アプローチを、存在論や認識論を議論する段階から、方法論や具体的な技法としての方法を議論する段階へと前進させることにあった。

 苫米地報告は、社会問題の構築主義的アプローチをめぐる議論をまず確認し、家族研究の領域にそれを用いているグブリアムとホルスタインの研究へと接続した。つづく松木報告では、そのグブリアムとホルスタインの「エスノメソドロジーの知見を用いる構築主義」の視点にたつ家族研究が詳述された。さらに橋本報告は、婚外子をテーマとして「当事者」の語りと専門家の言説をデータとした経験的研究を提示した。最後に、コーディネーターでもある岡本の報告では、近代家族論の議論と接続した家族の歴史的な構築主義的研究が提案された。

 これらの報告と木戸、山田の2名のコメントをふまえて全体での議論を行ったが、所期の目的を達成するには至らなかった。それは、多くの報告者とコメンテーターをたてすぎたという物理的問題だけではなく、より重要な問題があったからだと思われる。まず、前提となる、共有されているはずの存在論と認識論に乖離があったために、それらをもとに提案された方法論や具体的な経験的研究にも大きな隔たりがあった。これを、家族研究における構築主義的アプローチの可能性の豊穰ととらえるのか、逆に拡散だと危機的にとらえるのかは重要な分かれ目である。また、構築主義的アプローチをどう「使う」か、がテーマであったのに、使い方の方向性の提案とその検討にとどまり、具体的なデータを用いた検討が不十分だった。

 これらをふまえれば、どう「使う」か、を具体的なデータをもとに検討することと同時に、認識論の議論も依然として重要な課題であることがわかる。その場合、構築主義的アプローチの存在論と認識論、さらには方法論の議論と整備を綿密に行い、それを経験的研究に適用して多くの注目すべき成果をあげているグブリアムとホルスタインの研究は、やはり無視するわけにはいかないものだろう。
(池岡義孝・早稲田大学)

シンポジウム

「現代社会における家族ならびに結婚の意味を問う」
パートII 現代社会における結婚の意味を問う

  1. 歴史的に見た日本の結婚(落合恵美子)
  2. 農村に見る結婚の意味(篠崎正美)
  3. 女性に見る結婚の意義を問う(神原文子)
  4. 戦後家族・夫婦関係における男性の位置−男性研究の視点から−(伊藤公雄)
 シンポジウムのテーマは、昨年度に引き続き「現代社会における家族ならびに結婚の意味を問う」であり、今年度はそのパートU「現代社会における結婚の意味を問う」ということで、落合恵美子(京都大学)、篠崎正美(熊本学園大学)、神原文子(神戸学院大学)、伊藤公雄(大阪大学)の4人の報告者を迎えて開催された。ただ伊藤公雄氏は、体調不良のためやむを得ず欠席され、ご本人からの挨拶が司会より紹介された。

 まず落合氏からは、「歴史的に見た日本の結婚」というタイトルで、主に徳川期の農民の結婚が紹介された。そのなかで落合氏は、長期にわたるデータベース化が試みられた東北と濃尾と西九州の3つの地域を比較しながら18世紀〜19世紀にかけての配偶者選択と結婚の事情を論じた。

 次いで篠崎氏からは、「農村における家族と結婚」が報告された。農村では異性との出会いの場が少なく、いわゆる結婚難の状況にあることが紹介され、地域社会と結びついた生活のなかでの、都会とは異なる困難や問題点とその対策の現状が示された。

 3番目の神原氏は、「女性に見る結婚の意味を問う」ということで、まず、「結婚の意味」を問ううえでのいくつかの疑問が提示されのち、女性を取り巻く結婚の意味についての検討が行われた。とくに、結婚の意味は若い未婚者ばかりでなく、中年期の夫婦にも問題になるのではないかとの指摘は、他のパネラーからも賛同の声があがった。

 伊藤氏は、今回は事前レジュメと口頭メッセージだけであったが、男性学の立場からの結婚の意味を論じていただく予定であった。家族社会学研究に掲載予定の論考に期待したい。

 報告はいずれも力のこもった内容の濃いものであったが、「結婚の意味」をめぐっての議論をどのレベルに焦点化するか、フロアーにやや戸惑いがみられたように思う。司会の自省も含め、もう少し事前の論点整理が必要だったように感じた。
(岩上真珠・聖心女子大学、岩井紀子・大阪商業大学)