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Nd磁石を手作業で組みつける仕事の場合、磁界変化により人体に低周波の誘導電流が生じる可能性があります。 このような磁界あるいは電界による曝露に対する規制に関しては、国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection)のまとめたガイドラインがあります(注)。
それによると、周波数が数Hzから1kHzの範囲では、100mAm-2を超える誘導電流密度レベルは、中枢神経系興奮の急性変化および視覚誘発電位の反転などの急性影響の閾値を超えるとし、職業的曝露の場合、 4Hzから1kHzの範囲において誘導電流密度10 mAm-2なる基本制限を設けています。(安全係数を10としています。) 4Hz以下では制限は緩くなり、1〜4Hzで40/f mAm-2 (ただしfはHzを単位とした周波数)、1Hz以下では40 mAm-2です。
実際に体内の誘導電流を計測することは難しいので、ガイドラインでは数学的モデルなどを用いて基本制限から導き出した“参考レベル”を示しています。 参考レベルは、誘導電流のかわりに測定可能な電界強度や磁界強度で示されます。 これは想定される曝露状態で最悪な場合における全身についての空間的平均値であって、このレベルに以下であることが推奨されています。 周波数1Hz以下での職業的暴露の参考レベルは2000ガウスとなっています。
さて、Nd磁石を組みつける作業について考えてみましょう。着磁した磁石を移動させることは周囲の磁界を時間的に変化させることと同じですので、作業者は上記ガイドラインにおける超低周波の磁界の影響を受けることになります。 ただし手作業ですから周波数は1Hz以下と考えてよいでしょう。したがって、ガイドラインの1 Hz以下、2000 ガウス以下の規制となります。ただし、ガイドラインの参考レベルでは身体全体が時間変化する磁界に曝された状態を想定しています。
例えば、50 mm角ブロックで残留磁束密度が1.45 テスラのNd磁石(高特性グレード)について、磁石表面からの距離と発生される磁界の関係を調べてみます。(下図参照)
この例では比較的大きなブロックであるにもかかわらず、磁石から25 mm程度までしか2000ガウス以上になりません。ガイドラインでは中枢神経および視覚に曝露の影響が見られるとしていることから、人体の頭部および頚部への曝露量が重要であると考えられます。
しかし2000ガウス以上は25mm以内ですので、頭蓋骨があることも考慮すると、磁石を頭部に接触させない限り脳に対しては参考レベルには達しないと言えます。 着磁した磁石を扱う作業においてこのような状態になることは考えにくく、通常の作業を行う分には中枢神経への磁界の影響は少ないと考えられます。
ただし、作業中に磁石を持っている手の付近は磁界も強くなります。しかし、ガイドラインには手足の末梢神経に関する記載はありません。
この他に、発がんへの影響や生殖への有害な影響(ただし商用周波数程度の電磁界)に対するいくつかの報告も出されていますが、国際非電離放射線防護委員会では説得力のある、または一貫性のある証拠がないのでそれらのデータを曝露ガイドライン策定の根拠に用いることはできないと結論付けています。
なお、ペースメーカー・補綴用金属・人工内耳などの医療装置との電磁干渉に関しては別の基準がありますので注意が必要です。

磁石表面からの距離と発生される磁界の関係
注:
国際非電離放射線防護委員会は1992年に国際放射線防護学会から独立専門組織として設立されました。様々な種類の非電離放射線(NIR)に関連する可能性の考えられる生体影響を調査し、NIR暴露限度に関する国際指針を作成し、NIR防護のあらゆる問題を扱うために活動しています。Webサイトはhttp://www.icnirp.de/です。
上記解答で参考にしたガイドラインはhttp://www.icnirp.de/pubEMF.htmよりダウンロードできます。(日本語版もあります。)
回答作成:平成16年度MSJ企画委員会
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