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Q4. 保磁力と異方性磁界の関係がよくわかりません。
一軸異方性のついた軟磁性膜の磁化を測定しているのですが、容易軸から求めた保磁力と困難軸から求めた異方性磁界とが数倍違います。 どちらも磁化の反転に関係していて、磁化が飽和する磁場に対応するものをみていると思うのですが、このように異なるのは何故ですか?
A4.

磁化曲線で定義される保磁力と異方性磁界を復習しましょう。
図1に、特定な方向に一軸異方性をつけた磁性体の磁化曲線を示します。異方性と平行な方向(容易軸方向)に磁場を印加すると矩形のヒステリシス曲線が得られます。異方性に直交する方向(困難軸方向)に磁場を印加すると、 直線的に磁化が増加し、ある磁場で一定となる磁化曲線を描きます。

保磁力は「磁化の方向を反転させるのに必要な磁場の強さのことで、残留磁化がゼロになるときの磁場(残留磁化が磁場に対して対称でないときは、+側、−側の1/2)」で定義されます。
この図では、容易軸方向の磁化曲線では磁化が正負で対称ですから、磁化がゼロになるときの磁場が保磁力です。

典型的な軟磁性体の磁化曲線図
保磁力の図
異方性磁界の図
図1:参考図面

一方、困難軸方向の磁化曲線で磁場が飽和に達する磁場が異方性磁界です。 異方性磁界は「スピンをある方向にそろえようとする磁場の強さ」で定義され、結晶の中で特定の方向にスピンをそろえようとするエネルギーを磁場として表したものです。

図の例でみると、磁性体の磁化方向に対して垂直に磁場を印加し、磁化を完全に90°回転させるために必要な磁場に対応します。 保磁力は磁化反転の起こりやすさを現します。磁化は必ずしも一斉に反転するわけではありません。磁化反転は、磁性体の形状や組織、磁区の構造などによって変わるのです。 また、磁場を掃引しながら磁化−磁場曲線を測定する(通常のVSM装置などでの測定)では、掃引速度に依存して変化します。

これに対して、異方性磁界は結晶内でスピンをひとつの方向にむける異方性エネルギー(結晶磁気異方性エネルギーといいます)に対応する量です。 結晶磁気異方性エネルギーは、結晶の構造・配向に依存して決まるスピンの方向を固定するために必要なエネルギーであり、材料の性質を見たものです。結晶磁気異方性定数をKu、飽和磁化の大きさをMsとすると、Hk=2Ku/Msで定義されます。

異方性磁界を求めるということは、測定する材料が本来持つスピンの我慢強さを測ることになります。保磁力は、これとは異なり、着磁した方向とは逆に磁場をかけて、いろんな磁化過程を取りながらもだいたいゼロになるときの磁場をもって、磁化反転の容易さを見積もる値ということができます。
このような違いがありますから、保磁力と異方性磁界とは一致する必然性はありません。材料開発やデバイス開発に必要なパラメータとして使い分けることが必要です。

【参考文献】
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